さて第一回目のネタは、最近欧州でも高まっているアジア熱の中、ベルリンで襖や障子を製造販売している工房“匠 Takumi”さんを訪れた時に伺った、日本のライフスタイルに対するドイツ人の反応をご紹介します。

“匠 Takumi”さんの工房入り口があるHof(ホーフ;建物の中庭)
ベルリンの中でも割と移民の多いKREUZBERG(クロイツベルグ)という地区に工房を構えている“匠 Takumi”さんは、日本の和紙を使った襖・障子・パーティションなどの建具関係を主に扱っており、ドイツを中心とする欧州に向けて販売も行っています。一般の個人顧客の他、スポーツジムやスパなどのコントラクトでも実績があります。同工房の代表をしていらっしゃる、田丸康子氏とドイツ人のBernd Kuhn(ベルント クーン)氏は、日本の伝統デザインやライフスタイルをドイツや欧州に正しく伝えることに尽力されていますが、顧客の嗜好や要望に驚かされることも度々あると言います。
例えばドイツ人にも人気があり製作の依頼が多い障子も、紙を張り替える時のために格子は片側のみで、裏表があるのが日本人の常識ですが、デザインに対して左右対称を求める傾向が強いドイツ人は、裏面にも格子をつけて裏表を同じにすることを求めてくることが多いと言います。そこでこの要望に対応するために、裏面用の格子を作製して、張り替えのために取り外せるように設えるのだそうです。

取り外し可能な裏面用格子
同じようなケースで写真(下)のようなパーティションは日本独特のアシンメトリーデザインとしてお馴染みですが、これもシンメトリーデザインを好むドイツ人には評価が低く、左右対称にデザインすることを求められることが多いそうです。

ドイツ人にあまり好まれないというアシンメトリーなデザイン
また、障子をアレンジしたもので要望が多いのが、クローゼットや家具店で購入した既存収納の扉を障子で製作して欲しいという依頼だそうです。これも通常障子は和紙を使って貼りますが、扉としての耐久性を持たせるためにラミネートされた和紙や、和紙調のアクリルを使用して一部の要望には対応しているようです。収納の扉に障子を使うというのは、あまり考えられないことですが、どうやらアジア家具ショップと称する雑多なアジア製品を扱う店では、障子を扉にした収納がジャパンスタイルとして売られているのを散見するといい、こういったところからも誤解が広がっているのかもしれないと田丸氏は言っています。

日本的に見ると隣に部屋がありそうですが、実は作り付けクローゼットの扉(内照式)
このように比較的柔軟に顧客の無理難題に対応しているように見える“匠 Takumi”さんですが、やはりどうしても本来の日本的解釈から逸脱し、間違った日本スタイルとして捉えられかねないと思うものは丁重にお断りすることもあるそうです。クローゼットの扉なども、既存収納の扉を改造するという依頼などは、本来の使いみちから外れると考えてお断りすることにしているとのことです。売れるものは何でも売ってしまうというのではなく、このように日本の伝統・技術をできるだけ忠実に広めていきたいと思ってらっしゃる“匠 Takumi”さんの姿勢に感心しました。
最近でこそ若手デザイナーが多様な感性をもってきて、ドイツでも様々なデザインが紹介されていますが、一般消費者と接するお仕事をされているからこそ直面するドイツ人の嗜好というものを伺って大変驚きました。